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2001年『欲望という名の電車』 白と黒 [ストレートプレイ]

2007年11月に再演しますね。
恩田陸さんの小説『チョコレートコスモス』に
『欲望という名の電車』を演じるシーンが書かれていたので、なつかしく思い、昔の観劇記を読む。
篠井さんのブランチはあまりにも有名。
今年、また篠井さんのブランチに会えるわ。

6年前の私は、こんなことを考えてたのね。
最後の問いかけには、まだ答えは見つかっていない。

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2001年9月19日 青山円形劇場 舞台を前にして下手側2列目

作 テネシー・ウィリアムズブランチ・デゥボア    篠 井 英 介  ハロルド・ミッチェル  田 中 哲 司スタンレー・コワルスキー 加 勢 大 周  ステラ・コワルスキー  久 世 星 佳

スタンリーとブランチ <白(真実)と黒(真実・過去を隠す)>
 「欲望という名の電車」は過去数回上演している。
今回ブランチに初めて男性の篠井英介さんが挑戦する。
今まで男性でブランチを演じるのは禁じられていた。
私は初観劇。3時間あまりのストリートプレイ。
1幕は話の筋がわからなかった。
時々聞こえる「電車の通過音」は何なのか。

 
この舞台の話は衝撃的。
ステラの家に姉のブランチがたずねてくる。
ブランチは上流階級らしく気品がある。
ステラの夫のスタンレーは荒くれもの。
ブランチの淑女ぶりが気に入らない。
スタンレーはブランチの化けの皮をはがすため、
ブランチの過去をあばきだし、いまわしい過去をぶちまける。

しかし、それよりも昔、
少女時代にブランチは人生を破壊させるようなもっとすごい過去があった。
人には誰にでも暗い過去がある。
ただブランチの場合、
人には想像もできないようなおぞましい過去であった。 
2幕に入り、自分の過去をあばきだされ正気を失い
発狂するブランチ。
緊迫感が劇場を覆う。

ブランチはつねに黒い服を着ている。
ブランチ以外の人はみんな白い衣装。

スタンレーは乱暴だけど一番真実を大切にした人。
だから白。
ブランチは自分の過去を認めようとしない、過去を封印している。
だから黒。

黒い服というのは
「真実・過去」を隠すことを意味しているように私は思った。
自分の過去がなかったかのように振る舞うブランチ。
ブランチの普段の優雅さからは、
過去の記憶がすっぽり抜け出しているように思う。
でもその過去の記憶がよみがえってくるときがある。その時「電車の通過音」が聞こえる。

ここでの電車の通過音は、
のどかな田舎を行く電車の音ではない。
高架下で聞くようなざわめいた、嫌悪感のある音
ブランチは真実の過去が自分から出そうになると、
何も考えられなくなって意識が欠乏する。

その時、頭の中では電車が通っているのである。欲望という名の電車が。

電車が通過すると、何もなかったかのように元に戻る。
それにも限界がくる。
他人によって過去をあばかれたら電車の意味がない。
もう過去から逃れることはできない。
そして、最後 ブランチは白い衣装を着る。 
ブランチ以外の人は黒い服を着る。まるでブランチの存在、真実を隠すように。

ブランチの印象的なセリフ。

の反対は欲望だ」


ブランチは中性なのではないか。
男であろうが、女であろうが関係ない。
ブランチの行動は人間の普遍的な問題であり、
時代を超えて現代でも通用する悲しい現実なのである。

円形劇場の空間 観客をあえて意識しない芝居
青山円形劇場にての公演。
全体的に劇場がせまい。
300数名の劇場。

舞台ではまるで観客がいないように、
淡々と芝居が続けられていく。
観客にこびることもしない。
観客と目を合わせない。
でも、舞台の向こうには観客が存在している。

これは芝居なんだ。
自分は観客なんだと感じずにはいられない。

ふと帰り際に私は白と黒どちらなのだろうかと思った。

観客に無理矢理芝居のテーマを押し付けるのではなく、
観客それぞれが舞台から感じたことを心にとめる。
観客をあえて意識しないで、
観客それぞれの発想の膨らみを助けてくれる芝居だった。


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