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2009年8月12日 『怪談 牡丹燈籠』シアターコクーン [伝統芸能 ]

2009年8月12日 『怪談 牡丹燈籠』
シアターコクーン 2階コクーンシート BL列8番
作:大西信行 演出:いのうえひでのり

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<歌舞伎座の舞台の感想> 2002年9月12日昼の部 3階は列26番
『怪異談牡丹燈籠』
関口屋半蔵 相川幸助(二役) 中村吉右衛門   
女房お峰  妾お国 (二役) 中村魁春
娘お露   片岡孝太郎    
荻原新三郎 中村梅玉

○ちょっと期待しすぎたかも
「九月大歌舞伎『怪異談牡丹燈籠』で吉右衛門が善と悪の二役に挑む」と
書いてあるポスターを見て、
期待しすぎてしまったかもしれない。

今回の芝居は派手な立ち回りもなく、
しみじみとした世話物でもなく、ちょっと中途半端な感じがした。
役者さんが悪いわけでなく、脚本がちょっと苦しかったかな。
目立つような見せ場が少ない。
いろんな人が入り乱れて、結局どうつながっていくのかわからない。
派手な立ち回り
(2002年歌舞伎座 七月歌舞伎の『南総里見八犬伝』)や、
すばやい早替わり
(2002年歌舞伎座第3部 八月歌舞伎の『怪談乳房榎』)を
見てしまったせいか、
今回の芝居はちょっと物足りなかった。

でも、時々ハッとするような演技をみせていた。
吉右衛門さんは、「悪」の方が似合う。
でも、この「悪」の半蔵が完全に悪者ではなく、人間味がある。
ちゃめっけのある演技が吉右衛門さんらしい。
そして、時々、きりっと見せる仕草が様になっている。

お露を演じた孝太郎さん。
出てきてすぐ、かわいい。いかにも恋する乙女。
それが、次の場面では、幽霊になっている。
幽霊姿もかわいかった。

魁春さんは、貫禄たっぷり。
悪い女が似合うかも。二役ともきれいだった。
うちわを優雅にあおる姿が忘れられない。
着物の着こなしも優雅だし、演技に貫禄たっぷりだ。

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つまり、歌舞伎座で観た時の印象はよくなかった。
でも、今回は、瑛太初舞台ということと、
いのうえひでのりの演出に期待してみた。

登場人物
関口屋半蔵 吉右衛門 → 段田安則
相川幸助  吉右衛門 → (源次郎という役になっていた) 千葉哲也 
女房お峰  魁春 → 伊藤蘭
妾お国   魁春 → 秋山奈津子
娘お露 片岡孝太郎 → 柴本幸    
荻原新三郎 中村梅玉 → 瑛太

お露 → 新三郎 (恋い焦がれる) 
お峰 → 半蔵 (夫婦) 
お国 → 源次郎 (結託して人を殺す)


(あらすじ)
お露(柴本幸)は、あまりにも新三郎(瑛太)を恋するあまりに死んでしまう。
新三郎の元に、お露と、その乳母お米が幽霊になって化けて出てくる。
君は死んだのではないかと新三郎がお露に問いかけると、
それはデマですと告げるお露。
その言葉を、信じてしまう純粋な新三郎。
毎夜毎夜、新三郎の元へ訪ねてくる幽霊のお露。
新三郎のお手伝いの半蔵(段田安則)が、たまたまその現場を見てしまう。
幽霊を抱く、新三郎・・・。

半蔵と新三郎は、お寺に行き、
幽霊を防ぐお札と観音像をもらってくる。
家にお札を張ると、お露は家に入ることができなくなる。
うらめしや。

また違う場面では、お国(秋山奈津子)が邪魔になった男を殺そうと
計画していた。それを助ける源次郎(千葉哲也)。
男を殺した際に、膝あたりを刺された源次郎。
殺した現場を見られたお竹という使用人を勢いで殺してしまう。


さて、お露の話に戻る。
お露は、半蔵の家に化けて出てくる。
「あのお札をはがしてください。観音像も遠くへ運んでください」
その話を女房のお峰(伊藤蘭)に話す。
お峰は、幽霊への交渉を持ちかける。(←女は怖い)
「もし100両くれるなら、お札と観音像を遠ざけてやろう」
まあ、100両なんて大金、無理かもしれないしねって。

しかし、翌日の夜、乳母お米の持っていた牡丹燈籠が空を舞い、
100両の小判が空から降ってくる。
約束通り、お金を受け取ったので、半蔵は、お札をはがし、
観音像をうちまで持ってくる。(←やるのは男の仕事)
観音像は、売り飛ばせば200両以上になるかもしれない。

お札がないと知らず、寝ている新三郎の元へ
会えないばかりに、かなり憔悴した、見るからに幽霊だとわかるお露が
訪ねてくる。
「これから毎日一緒にいましょう」というお露。
新三郎は・・・、血を、どばーーーと口から出して、死んでしまう。
(1幕終了)


お金持ちになった半蔵とお峰は、江戸を離れ、商店をはじめる。
半蔵とお峰は、ものすごく仲の良い夫婦だったのだが、
金持ちになったがために、半蔵は、遊女のお国に夢中だ。
お国は、半蔵にお金を融通してもらい、
足に怪我をした源次郎と、しばらく温泉にでもいこうとする。
お国が愛しているのは、あくまで源次郎だ。

お峰の元へ、江戸のときの友人の、お六が訪ねてくる。
それを快く受け入れるお峰。
お国の遊女仲間のお梅が、必要ないのに殺してしまったお竹の妹だと知って
びびる、お国。

半蔵が遊女と遊んでいること、お峰にばれて、激怒。
でも、まあ、なんとかなだめる。
ここまでは、お峰優位だったはずなのに、
江戸からの友人、お六がきたんだよと話すと
「江戸のことなんて、忘れろ!」と逆ギレする半蔵。
そこへ、ふらふらと、お六が幽霊のように現れる。
「半蔵さま、お札をはがしてください」と、お露の言葉を口にする、お六。(←恐怖)
観音像を売り払って、さらに遠くへ逃げようとする半蔵とお峰。

観音像を隠してうめていたところへ行き、半蔵が掘る。
掘っているようにみせかけて、半蔵は、お峰を殺す。
何度刺されても、かなり、すさまじく髪を振り乱してお峰は立っている。
最後の力を振り絞って、お峰を殺して、お国と逃げようとする。
(あれ?誰に殺されたんだっけ)
足が悪い源次郎も、誰かに殺される。
ああ、確か、お峰が、すばやく化けて出てきて、
お国と逃げようとする半蔵を、ハンドパワーで、あちらこちらに引っ張っていく。
妻殺しの罪で逮捕される半蔵と
夫殺しの罪で逮捕されるお国。
お国は、「私は源次郎を殺していない。殺したのは、過去の邪魔な男だ」と叫ぶ。

結局は、悪いことをした人は、幸せにならない。
殺した人の関係から、逮捕されてしまうという話。

通行人を演じるお峰。
「新しい着物と帯を買いにいきましょうよ」と、はしゃぐ
幸せそうなお露と新三郎。
最後は、死んだ人が、本当は殺されてなくて
生きて、幸せだったんじゃないかという回想のような
妄想のような明るい場面で終了。


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最初、現代劇になおしているのかと思ってたのに、
ばりばりの歌舞伎で、びっくり。
ただ、歌舞伎だけど、セリフは、聞きとりやすくなっている。
見得を切るっぽいところも、3回ぐらいあった。
見得は、すべて半蔵。
いのうえ歌舞伎で、染五郎がやった見得よりは、簡略化。
ツケ打ちは、本物ではなく、音声で。
盆が回るときは、「トントントントン」と太鼓の音が流れる。
休憩の時の太鼓の音も出る。
本物ではない分、ちょっとだけ違和感があるが、
歌舞伎じゃないけど、歌舞伎っぽい演出はよく出ていた。

瑛太の出番は、1幕と、2幕最後に、ちらっと妄想シーンに出てくるだけだ。
瑛太は、半蔵に殺されたようなものだから、
半蔵の元に化けて出てくるんじゃないかと、
ドキドキしていたのに、化けてでてこない。
瑛太って、本当に、いい人なんだなーーー。

瑛太は、テンション高すぎでも、低すぎでもなく、
芯のある青年を熱演していた。
舞台に立っている姿が、立派。
声もよく通る。
他の役者と違うオーラではなく、
あくまで、メンバーの一員として、しっくりきた。

段田さんと、伊藤さんのセリフが、とにかく多い。
段田さんは、言うまでもなく、みんなとは違う心地よい声。
伊藤蘭が、だめだめな亭主に対して、愚痴を言ったり
やっぱり大好きって表現したり、いろんな表現を使い分けて好演。

悪いことをするとき、客席の通路を通りながら
「だれも、みてやしねえな」って言う時に、客席から笑い。
だって、私たち観客が見てるもんね。
でも、だれもみていないように、慎重に演じる。
こういう、ちょっとした笑いがある。

お露、お国、お峰、など名前がわかりにくいけど、
後半、人物がつながってきて、幽霊が出なくても、ぞっとする。
幽霊に対して交渉を持ちかける、お峰。
邪魔な人を殺していきのびる、お国。
好きな人を殺してまでも一緒にいたい、お露。
女は、怖い!!!

いのうえ歌舞伎っぽい、「ハァアーーァアア」って(表現下手だな)
あの独特のきれいな音楽で、最後は、しんみり泣けてくる。
歌舞伎座で観た時は、つまんないって思ったけど、
コクーンの芝居は、どの場面も、食い入るように集中して観ることができた。
歌舞伎の題材ということで、50代以上の方たちが多かったけど
最後まで観ればわかりやすいので、だれにでも楽しんでほしい。

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